のんびりルーム~軽度知的障害の私~

20歳で知的障害が判明した私のおはなし。

主治医と、私。

ある日の診察で、主治医から言われた言葉が私を混乱させた。

 

「なぎちぃさんは知的障害ではないと思う。発達障害とも言える。9年前の知能検査で動作性IQが低く出たのは、体調の悪い時に検査したからでは」

 

確かに、動作性IQは鬱状態のときは低く出る傾向があるらしい。ただ、私はそんな事はなく、きちんと体調の良い時に検査をしたのに…

 

 

9年前、知的障害と判った時。

私はひどく安心した。

 

今まで頑張っても出来なかった事はすべて、障害のせいだと判ったから。自分の努力不足ではなかったから。

 

なのに。

 

主治医からの何気ない言葉で私は不安になった。

 

知的障害でなければ、出来ない事が多いのは"甘え"なのだろうか。

やはり私はただの努力不足な人間なのだろうか。

そして、私は嘘をついて療育手帳を持っているのだろうか、と。

 

だとしたら、そんな事を軽くは言われたくなかった。

私がどんな思いで自分の障害を受容してきたかも知らずに。

 

 

不安定な日々は続いた。

毎日思い悩んで、時には涙が止まらなくなった。

 

でも、このままじゃいけない。

そう、思った。

 

 

ある日の通院日。診察室に入った私が主治医に渡したノート。そこにはこう書いた。

 

「お薬はそのままでいいので、おはなしを聞いて頂きたいです」

 

そしてゆっくりと、はなし始めた。

 

9年前、今まで出来なかった事は障害のせいだと判って安心した事。

私は努力不足のダメ人間だと思ってたけど、それは違うと自分でも思えた事。

でも主治医のひと言で、まるで、嘘をついて療育手帳をもっているかのような罪悪感に苛まれている事。

そして正直、主治医を変えようか迷ったけど、○○先生は優しいし話やすいから変えたくない。だからこそ、今こうして私の気持ちを正直に話しているのだという事。

 

最後には泣きながら、震えながらはなした。

 

主治医は黙って、聞いてくれた。

そしてひと言「疑っているわけじゃないんだ。でも、すみませんでした」と、理解を示してくれた。

 

 

その後、9年振りに知能検査(WAIS-III)を受け、改めて軽度知的障害だと診断された。

 

ほっとした。

 

 

今は主治医との関係は良好で、あの時勇気を出して気持ちをはなして良かったと思っている。

 

 

そして、今となっては私の良き理解者になってくれた主治医。

 

改めてこの先生で良かったと思ったし、自分の気持ちを、考えを、きちんと伝える事の大切さを学んだ出来事だった。

 

 

──────────ここまで読んで下さってありがとうございました。